日本の住宅の現状、暮らしを楽しむ家とは?
1970年代末に初めて欧州7カ国を訪ね、ロンドン郊外の個人住宅を見学させて頂いたときに強いカルチャーショック受けたことが忘れられない。当時、東京でプレハブ住宅の商品開発の仕事に携わっており、「工業化により性能の良い住宅を如何に安く造るか」が業界の目標であり仕事の目標でもあった。ロンドンの戸建住宅の街並みは美しく、見せて頂いた住まいは美しく、インテリアで個性を表現し暮らしを楽しむ家であった。住まいには機能や性能よりもっと大切なものがあることに気付いた瞬間であった。
1979年にECが出した「対日経済戦略報告書」の中で日本の住宅が「ウサギ小屋」と表現され80年代に物議を呼んでいたころ、当時の建設省の官僚は我国の新築住宅はもはや規模や設備において欧州に引けを取らないと反論していた。ウサギ小屋を意味するものは、住宅のハード面ではなく、家で暮らしを楽しむ文化(ソフト)が醸成されていないことの指摘ではないかと秘かに頷いていた。
フィンランドでは半地下室にサウナのある家、欧州では主婦室にテキスタイルの織り機のある家、米国ではエクササイズルームのる家などを多く見かけた。諸外国の戸建住宅で共通していたのは、家具や手づくりなどのインテリア小物等をうまく使い、住み手の感性で個性的なインテリアの演出を楽しみ、家族団らん重視、友人知人を招き談笑やホームパーティを楽しむ生活習慣でであった。
工業生産住宅先進国?の我国は今日においても、住宅メーカーの宣伝はオール電化住宅、高気密高断熱、耐震性、ソーラーゼロエネルギー住宅など機能性や省エネなどハード面が中心となっているのでは?
高性能な住宅が必ずしも豊かな暮らしを育むものではない。欧米住宅の外観を真似たデザインハウスに何十年も愛着が持てるであろうか?
風土、歴史、文化などの特性に応じた地域環境に調和し、暮らしを楽しめる誇りと愛着のもてるソフト重視設計の家づくり(住宅)を勧めたい。