木の長所と短所
住宅で木を使うと良いというのは誰もが何となく感じているかもしれませんが、いったい何が良いのでしょうか。木にも長所と短所があります。樹種によって違いがありますが、一般的な木の特徴を挙げてみたいと思います。
1,断熱性が良い(熱を伝えにくい)
タイルや石に比べて、木は空気を沢山含んでいるため、断熱性が良い材料です。よって、暖かく、柔らかく、素足で歩くと気持ちが良い材料です。
床冷えする住宅では、既存の床材や壁材の上に無垢の木を張ると、解体費用が掛からない上、断熱性能が向上して暖かい家になります。
いろいろな素材の失熱比較
失熱が小さいほど断熱性能が高い材料になります
出典:財団法人日本木材総合情報センター「木材の基礎知識」
しかし、柔らかいということは傷がつきやすいという欠点でもあります。床に使用する場合、傷がつくことを享受できるかが重要になります。この傷を味わいと思えることができれば、これほど心地良い床材はないでしょう。
2,調湿性がある
木の持つ素晴らしい特徴として、空気中の水分を吸ったり吐いたりしてくれる性質があります。柱一本でビール瓶7本程度、4~50坪くらいの木造住宅では年間ドラム缶10~15本分の水分を吸放出すると言われています。広島の温暖湿潤気候では、高温多湿の夏は、木の多い住宅に入ると湿度が低くなるので涼しく感じ、乾燥する冬は湿度を高めてウィルスの繁殖を抑えてくれます。
木を多く使った家は、ビニル壁紙に囲まれた家に比べて、エアコンをあまり使わなくて済み、省エネにもつながるのです。
しかし、吸放湿性があるということは、木が伸びたり縮んだりするということになります。夏は膨らみ、冬は縮みます。冬になるとフローリングは、継ぎ目に隙間が空くことがよくあります。木は「動く」ということを享受していないといけません。
又、吸放湿性があるということは、木に無数の微細な穴があるということです。この性質により汚れが付着しやすいので、手入れが大変ということも知っておかなくてはなりません。
傷や汚れが付きやすく動きやすいといった弱点を補うために、表面にポリウレタン樹脂塗装が施されます。非常に硬いプラスチック膜で表面を覆うので、様々な外的攻撃から木を守ってくれます。しかしそれと引き換えに、木の最大の長所である断熱性や吸放湿性は失われてしまいます。極端な例え話をすると、透明プラスチックに保護された綺麗な木の標本を見ながら、冷たい床をスリッパで歩くというライフスタイルが一般的になってしまっている現状があるのです。
新築やリフォームで木を使うとき、何を優先するのかをよく考え、塗装の種類にも気をつけたいものです。
3,燃えやすい
木は誰もがご存じの通り燃えやすい材料です。
家の火災保険を見てみても、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べて高額になります。
木の最も大きな弱点の一つと言えるでしょう。
しかし、住宅で火災が起きたとき、大切なのは人命を守れるかということです。
そう考えると、木は実は案外火に強いのです。それは、木が燃えた時はまず表面が炭化し、その断熱効果によって木の内部まで燃え進むのを遅らせる効果があるからです。木材の炭化速度は、1分間に0.6~0.8mm程度で、仮に15分間火にさらされても、9mm~12mmしか炭化しません。(「消防白書」による、殆どの火災は、火災通報から15分以内に消火活動が開始されています)そのため、火災で木造住宅が倒壊に至るまでの時間は柱の太さで決まる事となり、太い柱を使った家は安全ということになります。
火災での死因は実は毒ガス(一酸化炭素等)中毒が多いのです。塩化ビニル樹脂からは、猛毒のダイオキシンを発生します。この塩化ビニル樹脂から生成されたビニル壁紙やクッションフロア等新建材に囲まれた耐火建築物と、自然素材に囲まれた木造住宅のどちらが火災に対して安全でしょうか。
4,節がある
木は、様々な表情を持っています。
節、あて、目廻り、めぎれ、丸身、青太などの表情は欠陥と言われ、美観を損なうため「銘木」からはねられてしまいます。
しかしこれらの欠陥が無い「銘木」は、大変高価になるため、現代住宅では敬遠されているのが現状です。
これらの欠点が有るがゆえに、同質な廉価資材が大量に求められるマンションや建売住宅は木が使えないのです。
結果、銘木の突板(薄い板)を合板の表面に張った偽物の木「銘木合板」が多用されており、今や(木目がプリントされた)MDF(ファイバーボード)や合板にビニルシートが貼った、もはや木ではないものの方がより多用されています。皆さんの周りの「木」みたいなものが本物かどうか触って確認してみてください。
多くの無垢の木を現代住宅に使うには、これらの欠点を人間の「ほくろ」と見ては如何でしょうか。マリリン・モンローや南野陽子(少し古い・・・?)は「ほくろ」がステータスとなっています。そのように享受できると親しみやすく、愛着が湧き、廉価で無垢の木を使うことができるでしょう。
人間同様木にも長所と短所があります。長所は短所を併せ持ち、短所は長所として捉えることもできます。特徴をよく知り、木を使いましょう。
先日、ある住宅展示場に足を運びました。
床には無垢の木のフローリングが張られ、自然塗料が施されていました。
「無垢の木を使うんですね。いいですね~。何の木ですか?」と聞いてみたら、随分裏でひそひそ話をした後に、
「木の種類は外国の木だったと思います。実はあまりお勧めできないんです。汚れやすいですし、傷がすぐ付きますから。」と言って複合フローリング(合板に薄い突板+ポリウレタン塗装)を勧められました。
「・・・・。じゃあなんでここに張ってるんだ・・・(心の叫び)」