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社長BLOG



金堀健一

木づかいの現状

今回から数回に分けて、ホルツバウハウスの考える住宅の木づかいについてお話させていただきたいと思います。

 

「あなたの家の柱やフローリングは、どこの国の何という木ですか?」

木造住宅に住む人に聞いても、答えられる人はほとんどいないでしょう。木にこだわっている一部の住宅会社を除き、木造住宅を提供しているほとんどのハウスメーカーや工務店の営業マンに聞いても、答えられないのではないでしょうか。

 

日本の森林面積は約2,500万haあり、国土面積に占める割合は約66%で、森林率は先進国の中ではフィンランド・スウェーデンに次いで第3位の森林大国です。

戦後大量に植林された杉や檜(ひのき)は収穫適齢期(45年生以上)を迎え、少子高齢化が進んでいます。

日本は資源の少ない国とよく言われますが、森林資源については乏しいわけではなく、実は使われずにいるという現状があるのです。

伐採量

      森林蓄積量に対する年間伐採量の比率

 

昭和30年は約95%有った木材自給率は、外材の輸入増加と林業の衰退が進み、現在では約35%と近年増加傾向ではありますが、未だ2/3は外材の輸入材を使用していることになります。食料自給率が40%しかないとマスコミで世間を賑わせていますが、木材はそれどころではありません。しかも、食料と違って、目の前に沢山国産材が存在しているのにもかかわらずです。

そして、近年のコロナと原油高の影響により、各地の巣ごもり需要が自国での木材需要につながり、輸入に頼っている日本においてウッドショックとなってしまいました。木材の値段が、2年前の1.5~2倍になっているのを皆さんご存じでしょうか。

 

なぜこんな状況になっているのでしょうか。

 

木材自給率

              木材の供給量と自給率           

我が国の木材自給率と供給量              我が国の木材需給状況

答えは明確。外材との価格競争に勝てなかったからです。

日本は戦後、木材需要の急増によって高騰した国産材の価格を安定化させようと、1964年に木材輸入を完全自由化しました。賃金水準が高い上、森林の地形は急斜面が多く、森林の所有規模が小さく分散的であることなどから、日本林業のコストはどうしても高くならざるを得ず、安い外材には適わなかったということです。

 

冒頭に述べたような、家に使われている木に対する認識不足の原因は、日本の住宅の歴史から見ても分かります。

日本は戦後、焼け野原になった敗戦国であったことと第一次ベビーブームにより、深刻な住宅不足に陥ります。質より量が必要な時代だったのです。

そこで国策として、住宅の大量生産の為にハウスメーカーを誕生させ、プレファブ住宅を大量生産していきます。住宅の大量生産の為に、住宅は従来の湿式・真壁工法から乾式・大壁工法になります。早く大量に造り、構造を強く、高気密化するためです。

 

それに伴い、自然素材が新建材に変わっていきます。合板・集成材・パーティクルボード・ファイバーボード等様々な木質系新建材が生まれます。メラミン化粧合板やプリント合板、塩化ビニルシートなど、一見「木」のような偽物の材料が住宅に使われるようになります。これらの開発により、均一的な住宅が大量生産できるようになったわけです。

 

そうやって住宅の表面から、木は消されていったのです。

 

今でも廉価に造られている住宅で表面に見える、木質系仕上げ材はほとんど木ではありません。マンションであればなおさらです。

ラミネート天井             ラミネート天井(紙に印刷)

 

塩ビシート

          塩ビシート(プラスチック)

 

メラミン化粧合板          メラミン化粧合板(プラスチック)     

 

以前健康食にこだわる方々を集めて「親子で木育教室」を開催させて頂きました。木質系新建材に対し、「今皆さんが触ったものは何でしょう?」という質問を投げかけると、親も子供たちも全員が口を揃えて「木でしょう!?杉かなぁ?欅(けやき)かなぁ?」と無垢の木以外の物と疑うことをしませんでした。

 

日本は石油を大量に消費する化学革命による高度経済成長の裏で、3つのしっぺ返しを受けたと考えています。

1、地球の健康を失う(地球温暖化等)

2,人間の健康を失う(公害・シックハウス等)

3,人間の感性を失う(本物が分からない)

 

急激な経済発展が起こるとき、反動として大きなしっぺ返しを受けるのは人間が既に何度も経験していることです。18世紀のイギリスの産業革命をはじめ、20世紀の日本の化学革命、そして今の中国が分かりやすい例です。

私が失った3つの中で最も興味深く、懸念していることは、3の「人間の感性を失う」ことです。

衣食住の中で、日本は住のレベルが極端に低いと言われています。お洒落な服を着こなし、健康に気を使って国産の野菜を摂取し、シックハウスで偽物だらけの住宅に住んでいる。平成15年の建築基準法改正により、シックハウスは無くなったと勘違いしている方が多いですが、高気密化された住宅で、新建材を使った廉価家具を一つ入れただけで簡単にシックハウスになります。窓が小さく、複合フローリングとビニル壁紙で囲まれた部屋では、住まい方を誤るとカビやダニだらけの家になってしまいます。

 

日本人は元々木の文化で育った素晴らしい住感性を持っていました。お寺や古民家を見ると理解できます。この住感性を取り戻す解決策は、国内の林業を復活させ、住環境の中で「木の文化」を取り戻すことでしょう。

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