注文住宅を建てる時の外国産木材の利用について
私たちが理想の住まいを建てるとき、無垢の木を使うことを大切にしています。
その中でも、国産の無垢材を使用するようにしていますが、必ずしも国産でなくてはならないとは思っていません。
木の性質を良く理解していれば、日本には存在しない、外国産で優れた樹種も多くあるからです。
木についてあまり知らない方が、やみくもに外国産材はダメだというのはちょっとおかしいですね。
今回は外国産材の中でよく使われる樹種の一部を選定し、紹介したいと思います。
【針葉樹】
1、スプルース
北米大陸出身の木で、米唐檜とも呼ばれます。白っぽくて軽く、柔らかいので加工性に優れています。
和室造作材をはじめとする一般建築材の他、建具・サウナの内装材・楽器材に使われています。障子の組子は、かつては杉や桧が使われていましたが、現在はスプルースが最も多く使用されています。又、柔らかい木なので高い音を効果的に吸収して、まろやかに感じられる低い音を響かせる特徴を持っているため、ピアノの響板には高級スプルースが使用されています。
障子の組子 グランドピアノの響板
2、ホワイトウッド
ヨーロッパ(特に北欧)やロシア出身の木で、欧州唐檜とも呼ばれます。
同じマツ科トウヒ属のスプルースによく似て白っぽくて柔らかい木です。見た目がとても綺麗なので、家具や楽器に使用されています。柔らかいので加工性がよく、安く、狂いが少ないので、日本でかなり普及している木です。日曜大工や工作には最適な材料の一つと言えるでしょう。
ホワイトウッドスツール
しかし、耐久性がないという大きな弱点を持っています。
現在多くの住宅会社が上記の加工性がよく、安く、狂いが少ないという長所を理由として、ホワイトウッドの集成材を柱材として使用しています。
今の住宅は大壁式(柱が壁内に隠れている)が主流なので、表からは見えません。
湿気がなくシロアリが生息しにくい土地で育った木なので虫害や腐朽菌に対する抵抗力が極端に低い木です。
当社ではまず構造材に使うことはしませんが、何も知らされず、安いから使われているということはよくある話なので、構造材に使うことだけは避けましょう。
木材・住宅情報交流組織LICCによる木材耐久実験
(実験開始から4年半後)
一般的に使用されているホワイトウッド集成材柱
3、ベイマツ
北米大陸の西部からメキシコ出身の木です。
日本の地松が減少する中、代替材として柱や梁等構造材や内外装材に多く使用されています。
杉と共に、木造住宅の構造体(特に横架材:梁など横に架け渡す構造材)の主流材になっています。柾目取りした良質材は、「ピーラー」という呼称で高級材として取り扱われています。偽物の木と見紛うくらい癖のない綺麗な表情をしています。
ピーラーで造られた扉
4、パイン
アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカ等広い地域出身の木です。
少し黄色っぽい色をしており、家具や建材・フローリング等幅広く使われています。
顔料(色粉)の入った自然塗料を塗布すると、雰囲気が出ます。又、節を活かしたカントリー家具の素材としても人気が高いです。カントリー調の家にしたい方にはお勧めです。
顔料入り自然塗料で塗装したフローリング カントリー調家具
【広葉樹】
5、チーク
タイ・ミャンマー・インドネシア等熱帯地域出身の木です。
現在は自然保護のため伐採禁止になっている所が多く、輸入が厳しくなっています。
チークは世界の最高級材の一つです。
少し赤みがかった濃い黄金色で、割れや反りが出にくく、水湿やシロアリ等にも強い特徴を持っており、高級家具、フリーリングの他、高級船舶のデッキ材等に使用されています。
かの有名な豪華客船・タイタニック号のデッキにも使用されており、沈没したチークのデッキが未だ無傷で残っています。
又熱に対して反りにくいので、床暖房のフローリングとしても適しています。
「木の王様」とも言われるチークは、値段が高いという以外の欠点は見当たりません。
高級感溢れるチークフローリングと家具
以前訪れたタイの古民家は、木部は100%チークが使われていました。
なんと高級住宅!と思いましたが、よく考えるとパルテノン神殿等ギリシャの古建築に大理石、日本の寺院に桧が使われることを考えると、昔は地産地消が当たり前だったのですね。
タイの古民家
6、ブラックウォルナット
アメリカ東部・カナダ出身の木です。
色はチークに比べて赤みが少なく灰紫色で、クールな色味です。よって大変人気のある木です。今流行っているモダンなインテリアショップに行けば必ずと言って良いほど置いてあります。明治時代以降ヨーロッパ家具などで使われていたチーク・マホガニーと並んで、「世界三大銘木」と呼ばれています。私が最もかっこいいと思う木です。
木目が大変美しいため、高級家具材や工芸用材、ドア・造作材・フローリング材・内装パネル材・楽器等に使用されています。
スタイリッシュなイメージのフローリングと家具
7、イぺ
ブラジル・ペール等南米アマゾン川流域出身の木です。
重厚で木目が交錯している変わった木です。反りやひび割れが少なく、耐水性・防虫性にも優れています。
フローリング・ウッドデッキ・船舶材、枕木等に使われています。
あまり一般的に知られていなかった木ですが、2002年に竣工した横浜大桟橋国際客船ターミナルのデッキ材に使用されたことで一気にメジャーになりました。
豪快な形態の横浜客船ターミナル
ターミナルを見ると一目瞭然ですが、住宅においてはデッキ材に適しています。デッキ材の腐朽・メンテナンスでお困りの方にはお勧めです。
8、コルク
ポルトガルを中心とした地中海地方出身の木・コルク樫(がし)の樹皮です。
樹皮なので今まで紹介した木材と単純比較することはできませんが、近年住宅によく用いられているので紹介させて頂きます。
コルクは、ワインの瓶の栓に使う為に伐採されます。コルクの栓は形が円柱の為、必ず端材が出てきます。これを粉砕・成型加工されたのが、建材や野球のボールの芯・バドミントンのシャトル等になります。
コルク樫の樹皮は約9年ごとに再生し、木を伐採せずに1本あたり15~18回も採取できるため、環境保護・資源保護の両面から注目を集めています。
コルクの特徴は、発泡スチロールのように多孔質で、弾力性があり、水をほとんど通しませんが、通気性があり、保温性に優れています。
よって住宅内ではタイルとして床材に使用する暖かく、柔らかいので安全です。
高齢者の住む住宅では、浴室の床材に用いるとヒートショックにも転倒にも安心です。又、滑りにくく関節への負担が少ないので、ペットと同居している家にもお勧めです。厚みが3mmや5mmと薄く、既存のフローリングの上から簡単に張ることができます。
是非リフォームでお試し下さい。
外国産材の伐採される国や地域を「出身」と親しみを込めて表現させて頂きました。
住宅に木を使うと、毎日一緒に暮らすことになります。
どこからきた木かを知っているだけで、親しみが湧いてくることでしょう。
木は樹種によっても腐朽や虫に対して強い・弱いという違いがありますが、一般的に濃い色味のチークやイぺなど熱帯地域で育った木が強いという特徴があります。
これは、熱帯地域は腐朽菌や虫など、外敵が多く存在する環境の中で育っているからです。
逆に、白っぽくて綺麗な肌を持っているスプルースやホワイトウッドなど寒い地域で育った木は、外敵が少ない環境で育っているので、耐候性がないということになります。
適材適所の一つの考え方として覚えておくと良いでしょう。(青森ひば等例外も有ります)
外国産材8つの木を紹介させて頂きました。
何か気に入った・もしくは気になる木は有ったでしょうか。
色、柔らかさ、杢の表情、暖かさ、肌触り、耐久性、香り、雰囲気、そして価格。
人間同様、木にもいろんな特徴を持ったいろんな木があります。
木を良く知り、適材適所で自分の理想の住まいに使えたら、とても楽しく豊かな住まいになるでしょう。
ちなみに私が使いたい理想的な適材適所は
構造材:土台は桧葉、柱は桧、梁などの横架材は地松。
仕上材:1階居室の床はチーク、2階居室の床と天井は杉、和室の床柱は欅、
押入れとトイレの床と壁は楠、浴槽は桧、浴室の壁は椹(さわら)、
浴室と洗面所の床は炭化コルク。
外構材:外構のデッキはイぺ、アプローチは栗。
家具他:家具はブラックウォルナットと楢、箪笥は桐、風呂桶は杉、まな板は朴(ほお)、
将棋盤は榧(かや)、ギターはマホガニー、名刺入れは黒檀・・・。
こんな家が創れたらいいですね。