日本の住宅のあるべき姿
日本は西洋への憧れから、住宅も南欧風やバリ風などヨーロッパやリゾート地の住宅を真似て作っているところが多いと感じます。
ヨーロッパの景色はとても美しく、憧れる存在であることは確かです。
なぜあんなに美しく、輝いて見えるのでしょうか。
それは、街の景観をとても大切にし、形や色が統一された古い住宅を直しながら大切に受け継いでいるからです。
ヨーロッパの住宅は新築よりも古い建物の方が値段が高いのです。
古い建物には新築にはない風合いがあります。
長い年月をかけて生み出される風合いにより、ヨーロッパの建物は美しく豊かに見えるのです。
では、日本の住宅はどうでしょう。
近年日本の住宅も南欧風の建物や北欧風の建物が多く建っています。
しかし近年の日本の住宅を見て美しいと感じるでしょうか。
ほとんどの住宅が30年建って建て替えている現実があるのです。
それはなぜでしょう。
その答えは、日本で建てている南欧風・北欧風と呼ばれる住宅のほとんどが真似をした偽物だからです。
本物のレンガや漆喰でできているヨーロッパの建物とは違い、日本の住宅の多くはサイディングと呼ばれるレンガやタイルに見える外壁を使います。
それは新築時はピカピカできれいかもしれませんが、長い年月が経つと塗膜が剥がれ劣化していきます。
そこには風合いは生まれず、汚れた外観となり取り壊す原因となります。
住宅の中には、フローリングは施工やメンテナンスの簡単な複層フローリングを使い、ビニールで出来たクロスを貼り、シートを貼った建具を使います。
そして30年建ったら取り壊す。これが日本の住宅の現状です。
日本には日本の気候・風土・景色にあった住宅があります。
偽物ではなく、本物の素材を使ってつくる住まいは年月が過ぎるにつれ、木には艶が出て、風合いが増し、美しくなっていきます。
食事をしたり団らんをしたり体を休めたり、生活に欠かすことのできない場所だからこそきれいな空気で過ごしてほしい。
大切に考えてほしい。
日本の住宅が、偽物を使ったヨーロッパの真似事ではなく、日本の気候、風土に適した、ずっと住み続けていきたいと思う住宅であってほしいと思います。
住まいをつくる者として、その責任をしっかり果たしていきたいと思います。